島の当事者がアプリを開発 島への接点を作り、愛を育む『まるっと!神津島』がリリース!

 2024/07/13

「神津島の歴史ある文化、豊かな自然を残していきたい」という強い想いで、開発されたすごろく・音声ガイドアプリ『まるっと!神津島』が、7/12にiOS版登場と共に大幅にアップデートされました。
今回、東京都離島区編集部が実際に神津島に伺い、アプリを体験させていただいた上で、開発の経緯や展望を伺ってきました。

アプリには、2つの機能が用意されています。1つ目は、神津島のローカルなスポットを探索しながらゲーム形式で島の言葉や自然を学ぶ『島旅すごろく』。2つ目は、島を巡りながら神津島の歴史を臨場感あふれる音声で楽しむ『ドラマチック音声ガイド』。本プロジェクトの発起人は、神津島で『みんなの別荘ファミリアを営む田中健太郎さん(以下、健太郎さん)、田中あやのさん(以下、あやのさん)ご夫婦です。

2人が貫いてきた宿泊業のあり方

ー『まるっと!神津島』の開発の背景を語る上で欠かせないのが、田中さん夫婦が営む宿での経験だと聞きました。改めて、『みんなの別荘ファミリア』のこだわりを教えてもらえますか。

健太郎さん「私たちは『宿のフリした仲間作りやさん』をコンセプトに宿を運営しています。宿泊してくださった方々が島を離れる頃には仲間のような存在になってくれたら嬉しいと思うからです。なので、最初の出会いの場となる船のお迎えでは、とにかく自分から喋って信頼してもらえるように意識していますね。」

あやのさん「『沢山情報を教えてくれるから、なんでも聞いてみたい』という気持ちになってくれたら嬉しいですね。最初の会話の内容を元に、お客さんの旅プランを一緒に考えることもよくあります。島では、天候など予測不可能な部分も多いので、自分で予定を立てるよりも、まずは聞いてもらって、一緒にプランを立てていく方が結果的に満足してもらえると思っています。

他にも、宿泊は2泊以上からというこだわりがあります。
滞在時間が長い方が神津島をゆとりを持って楽しむことができますし、島での感動体験をきっかけにお客さん同士が繋がっていくことも多いからです。

そういう体験を繰り返しているから、チェックアウト後もお客さんとは良い関係を築けてますね。私たちが困った時に連絡したら、自分ごとのように一生懸命考えてくれたりと、色んな部分で助けてもらっています。」

ー確かに、旅行先での滞在が印象深ければ深いほど、次は自分たちが還元したいという気持ちになりそうですね!宿を通じた仲間作りが今回のアプリ開発に生かされた部分はありますか。

健太郎さん「そうですね、アプリに出てくるキャラクターの”ほしぴこ”は、『すみっコぐらし』の作者であるよこみぞゆりさんに制作をお願いしています。実は、よこみぞさんも元々宿のお客さんで、神津島で良い体験ができたからとキャラクターデザインを快く引き受けてくれたんです。」

『まるっと!神津島』の原点にあるのは、”島の誇り”

ーお二人は宿事業に携わる中で、なぜ『まるっと!神津島』を作ろうと思ったのでしょうか?

あやのさん「小笠原を2人で旅した時に参加した戦跡ガイドが原点だったと思います。そこで出会ったガイドさんの言葉の重みや小笠原の歴史に感動し、ガイドさんの大切さに気づきました。それと同時に、地域の文化は残さないといけないと強く感じたんです。神津島も昔からの風習や文化が無くなりつつあり、結構ピンチな状況にあるんじゃないかと考えさせられました。

健太郎さん「島の課題も沢山あって、解決しないといけないなという想いもありました。その課題を、まずは自分たちの力で解決し、神津島の文化や歴史を残すにはどうしたらいいか…とアイデアを練っていった結果、今回のアプリ開発に辿り着きました。」

あやのさん「しかもアプリの構想中、別のプロジェクトで訪れたコニカミノルタのプラネタリウムで、ナレーションの素晴らしさに感化され、音声ガイドを作る時には音声と脚本にこだわろうと思いましたね。」

ーインパクトのある原体験があって、アプリ開発を始めたんですね。アプリの中には、音声ガイドの他に『島旅すごろく』も搭載されていますが、すごろくができた背景も教えてください。

健太郎さん「神津島は海や星の綺麗さで観光PRをしていますが、タイミングによっては想像していた景色が見られないこともあります。その時に何もなかった…と帰るのではなく、素晴らしい文化や自然に興味を持って欲しいと思い、『島旅すごろく』も作りました。

すごろくには、遊べば遊ぶほど神津島に来たくなるような、自然の要素や文化など細かい仕掛けがたくさんあります。サイコロを振ってゲームが進むからこそ、予想できない展開もあって、そこが島旅らしいんですよね。島旅すごろくを事前に楽しんでもらうことで、島の心得を知ってもらえたらと願っています。

そうそう、すごろくはスポット数が120ヶ所ほどあって、探索して発見できる島の景色や植物、ちょっとマニアックなものまで、その数は2600件を超えているんですよ。」

ー2,600件はかなりの量ですね…!それだけの数をどうやって集めたのでしょうか。

あやのさん「クイズは自分たちで本を読んで手作りしましたが、歴史編の問題は友人が手伝ってくれたり、植物集めは地元の花好きの方に協力してもらいました。周りの人たちに得意なことをお願いして少しずつデータを集めていきました。データがあっても、整理して番号をつけてアプリに反映させる状態に持っていくのはすごく大変でしたね。」

ー宿のコンセプトにある通り、仲間作りに時間を費やしてきたお2人だからこその協力体制で実現できた部分も多そうですね!最後に、『まるっと!神津島』の今後の展望を教えてください。

健太郎さん「このアプリを通じて、お客さんが島の人と1人友達を作って帰って欲しいというゴールがあります。」

あやのさん「宿の女将さんでもいいし、居酒屋のおじさんでもいいし、年代を限定せず、その人がいるからもう一度神津島に行こうかなと顔を思い浮かべられる人を作って欲しいですね。」

健太郎さん「そのために、まずは私たちの宿に泊まりに来てくれたお客さんから『まるっと!神津島』を広げていく予定です。その後は、島内の宿や飲食店に連携をお願いをしようとしています。」

あやのさん「しかも、このアプリは英語版にもかなり力を入れています。むしろ、開発のスタートは英語版だったくらいです。日本人は日本の文化が当たり前に映ってしまうので、自分たちの身近にある文化がいつか無くなってしまうことにあまり危機感をもっていないかもしれません。なので、海外の人に注目してもらって、島を褒めてもらって、“すごい”と言ってもらえると、島の“誇り”が芽生え、守っていこうという気持ちになるんじゃないかと思います。『まるっと!神津島』を使ってくれる人が増えて、島の色んな情報を提供してくれたら、アプリももっと良くなり、どんどん面白くなると思います。」

島で暮らしていると、そこにある文化や歴史、自然は当たり前な日常の一部になってしまいます。しかし、観光客と地元の人々の接点をうまく作ることで、島民が自分たちの”誇り”に気づくことができる。その第一歩として、田中さん夫婦が作る『まるっと!神津島』は、観光と地域のハブとして、大きな役割を果たしてくれるかもしれません。

神津島観光アプリ「まるっと!神津島」

「まるっと!神津島」は、東京都の離島である神津島の旅を味わえる<すごろくゲーム>と、現地で聞ける<音声ガイド>の2つの機能からなる観光ガイドアプリです。旅マエにも旅ナカにも楽しくアプリを遊びながら、神津島を体験していただけます。

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