東京女子大学の学生が企画する『女子大生一人旅応援プロジェクト』の進捗報告
2022/06/19
以前にこちらの記事でご紹介した女子大生をターゲットにした旅行プラン『女子大生一人旅応援プロジェクト』。
その後も東京女子大学の学生さんたちによってプロジェクトは着々と進み、実際に伊豆大島に行って検討中のプログラム等を実体験することで、商品の実現可能性の検証やそもそも本当に魅力的な内容なのか等、商品としての完成度やアピールできるポイントの整理を行うことで、より具体的な企画に落とし込むべく現地視察を実施しました。
今回は現地視察のレポートを中心に、プロジェクトの現在の状況について、学生の皆さんよりご紹介します。
ツアー企画の背景と目的
私たちは「一人旅に挑戦したいが、一歩踏み出せない都内に暮らす女子大生」をターゲットに旅行商品づくりを進めています。ツアーに参加した女子大生が新たな旅の魅力を発見し、知見を広めることで成長につながるのはもちろん、伊豆大島に対する関係人口の増加にも貢献できるような旅づくりにポイントを置いて取り組んでいます。
今回の旅行商品づくりのきっかけとなったのは参加するゼミでの授業でした。現在はゼミ自体は終了したのですが、引き続き具体的に旅づくりを進めたく、有志で伊豆大島の方々の協力を得ながら商品化に向けた準備を進めています。
伊豆大島を旅行先として選定した理由は何といっても首都圏からのアクセスの良さと自然が豊かなところです。伊豆大島は富士箱根伊豆国立公園に属し、現在も火山活動を続ける活火山の島という特徴的な環境にあり、自然あふれる場所でありながら、首都圏に近く、東京竹芝から出港する高速ジェット船で1時間45分で行けるアクセスの良さから、女子大生が一人旅に挑戦しやすい環境が揃っているのでは、と仮説を立てました。一方で夜に東京竹芝を出港して翌朝大島に到着する大型客船もあるので、東京湾の美しい夜景を眺めながら翌日には日の出とともに大自然広がる大島に到着するという、非日常的な旅路を楽しむことができる行程もあるので、バリエーションに幅を効かせることも可能です。
また、持続的な旅づくりのポイントとしていかにリピーターを増やしていくか、という点があげられます。旅先に愛着がわくポイントは何より現地の方々との交流であると考えています。地元の方とのふれあいを創出することで、なにものにも変え難い“つながり”が旅を通じてつくれたらと考えています。
さらに、ツアーへの参加条件を「おひとり様限定」としました。同世代且つ一人旅がしたいという同じ悩みを持つ者同士、仲間意識が生まれることで、深いコミュニケーションが生まれます。また、より地域と深く関われるツアーを実現できるように最大定員も8名と少人数に設定しました。ツアーの実施時期は春夏秋冬の年4回開催とし、四季に合わせて旅行プランをアレンジしていく予定です。2回目のツアー以降に利用できるお得なクーポンの配布も考えています。
そんな「体験を通じた現地の人との交流」や「おひとり様限定」というポイントを強く打ち出すことで、他のツアーにはない独自性をこの企画の強みにしようと考えています。
検証のため現地視察へ
というわけで、6月初旬、事前に企画したプランが現地で無理なく実施できるのか、プランとして魅力的なものかどうかを検証するために現地視察を行いました。今回の視察の中で検証しようとあらかじめ考えていたプランは現地の島民の方が提供されている伊豆大島の特産である椿を使ったワークショップ体験や釣り体験、そして、夕食はバーベキューを楽しみ、その後ローカル色の強いスナックへ行き、星空を眺める…。そんな内容でした。
KARARAさんの取り組み
今回の旅行プランのポイントは前述のとおり現地の方々との交流です。大島ならではのユニークな取り組みをされている方と出会い、交流することで、通常の観光では得られないような体験をする。そこから島ならではの暮らしが見えてきたり、その人の個性や人柄に惹かれ、地域に対する愛着が湧いてくると思っています。
そこで、今回は大島の特産である椿を使った創作活動やワークショップをされているKARARAの杉本美佳さんにご協力をいただき、椿の殻のフォトフレームづくり体験をさせていただきました。
美佳さんは椿の実(殻)や種を使ってヘアゴムやフォトフレームなどを制作・販売を行うかたわら、それらを制作体験できるワークショップを行っています。
大島の特産品として有名な「椿油」は夏の終わり頃から収穫の時期をむかえる椿の種を集めてゆっくり天日で乾燥させて、良質な種だけを選別して搾りますが、椿の実(殻)の部分は畑の肥料にしたり、活用されずに土に還ったり、処分されたりしていました。美佳さんはそんな椿の実(殻)に着目して有効活用することで、椿の新たな魅力を引き出すとともに、かつては余すことなく広く活用されていた椿本来のチカラや島民の知恵を知っていただく機会にしたいと「KARARA」という名前で活動をはじめました。
作品づくりに利用する椿の実(殻)や種は天日でしっかり干して乾燥させて、実(殻)の部分は煮沸して殺菌。なんと煮沸する際の燃料は剪定した木を薪にして燃やしているそうで、KARARAの活動自体が循環として成り立っていて無理のないエコシステムが実現されています(薪割りはかなりの重労働だそうです)。煮沸後再び乾燥させて防カビや艶出し効果として椿油で磨きます。作品づくり全てがその土地で育まれた椿からの恵みで成り立っている素敵なストーリーです。
そんな素敵なストーリーの背後で、作品づくりやワークショップを行うまでに途方もない時間と労力をかけていらっしゃる美佳さん、その熱意と想いに触れることでさらに体験が貴重で尊い時間になりました。完成した作品もとても愛着がわいてくる、自分だけの素晴らしい思い出の品になりました。
かっちんの取り組み
続いてお会いしたのが“かっちん”こと杉山克己さん、かっちんは釣りの知識が豊富でイカ釣りが特に大好き。生粋の島人ということで釣りガイドとしてご協力をお願いしました。
かっちんは日本ジオパークに認定されている大島のジオガイドを目指されていて、正式に伊豆大島ジオパーク認定ガイドとなった際は、大島の各ジオスポットのガイドツアーはもちろん、得意の釣りはもちろん、教育の場で郷土芸能を教える立場でもあることから、それらを組み合わせて自分にしか出来ないガイドサービスを立ち上げようと準備を進められています。
今回は女子大生向けツアーということもあり、日中の時間帯で気軽に楽しめるスタイルの釣り体験をオーダーしました。小型の魚が釣れる仕掛けをご用意いただき、とてもわかりやすい説明とともに指導をしていただいたおかげで釣りの経験がほとんどない私たちでもすぐに釣りを楽しむことが出来ました。
釣り糸をたらせばすぐにブルブルッと面白い感触と同時に魚が釣れる。これがとても楽しくてみんなで大盛り上がり!伊豆諸島ならではのタカベという魚やサバなど、たくさん釣ることができました。早速今夜のBBQの食材にしようと楽しみが広がります。最後にかっちんから事前に釣り上げたという立派な赤イカをいただいたので、夜のBBQにお誘いしました♫今回のように思いがけずいただきものをゲットしたり、旅の中で展開する偶発的な出来事も大きな魅力ですよね。そんな仕掛けも今後考えていけたらと思っています。
BBQで語り合う
宿泊先は大島の南部地区にあたる波浮港のゲストハウス『青とサイダー』にお世話になりました。こちらの宿では屋外に広々とした芝生とデッキスペースがあり、開放感のあるBBQを楽しむことができるので、非日常的な空間の中でゆったり島時間を満喫することができます。
宿にチェックイン後、早速キッチンで食材の下準備をしつつ、火おこし開始です。普段あまりしない料理やBBQの準備が楽しくて、みんなで和気あいあいと準備を進めました。釣った魚は今回の視察に同行・サポートしていただいているTIAMのいと〜まんに下処理のやり方を教えてもらいながら慣れない手つきながらもチャレンジしました。自分たちが釣った魚をその日のうちにいただくことができるなんて!まさに島ならではの経験だなぁと強く実感しました。これは是非とも女子大生の皆さんに体験して欲しいです。
今回のBBQ食材は島内の各商店で買い物をしました。実際に買い出しをして調理して食べることで、食材の最適な分量や予算との比較、現地でのスタッフの役割や作業分担など、具体的に検証することができました。おかげであまりにお腹が空いていたせいか、余裕で食べられるだろうと思って買った内容が実は多すぎたことが判明、実際の半分の量で十分だということが分かり、食欲の力が判断を大きく鈍らせることを知りました笑。
あたりが次第に薄暗くなってくると焚き火の火の揺らぎが心地よい雰囲気に。みんなでいろいろなことを語り合いながら素敵な時間を過ごすことが出来ました。合流したかっちんや青とサイダーのオーナーである吉本さん、TIAMのお二人とも楽しくお話しすることができてとても有意義なひとときでした。
当初の企画ではBBQ後にスナックに行くことになっていましたが、実際に体験してみるとそこまで盛り込まなくても十分だということが分かりました。また、今回宿泊した波浮港周辺にはスナックが少ないこともあり、今回の視察内容をツアー化する際はスナック巡りは外そうということになりました。が、結局波浮の少ないスナックのうちの一軒にお邪魔し、ディープな世界を垣間見ました笑。この日はあまりにも楽しくって、結局寝たのは夜中の2時過ぎになっていました…。
このツアーを企画することの意図
翌日は実際に体験・検証してきたツアーの内容についてメンバー同士での確認やブラッシュアップの時間にあてることにしました。これまでご協力いただいているTIAMのお二人と元町のシェアハウス「クエストハウス」でじっくり打ち合わせを行いました。
最初に『女子大生一人旅応援プロジェクト』と謳っているだけに、あらためて”一人旅”の意義について深く考えることにしました。今回のツアーが“一人旅”と謳っていながら、1日目はグループで決められた行程を巡ることになる為、実際に販売した際にお客様がイメージしている“一人旅”とのギャップが生まれてしまうのではないか、と考えたからです。そこで、“一人旅”についてのイメージをメンバーであらためて共有しました。
主に出たイメージは下記のとおり、
- 一人で何かをすることへの憧れ
- 一人で行くからこそ得られることがある
- 自分でやりたいことが生まれて、責任感が生まれる
といった意見を中心に他にも、「気をつわない」「行動範囲が広がる」「自由な感じがする」といった意見が出ました。そこから、今回のツアーを「一人旅がしたくなる(できるようになる)為の準備の為のツアー」と位置付けることにしました。
おそらく、“おひとり様限定”ということで、ツアーへの申し込みは自分で判断して自分で申し込むことになります。その時点で一人旅への大きな一歩を踏み出すことにはなるはず。そして、ツアー1日目は同じ境遇にある参加者と行動をともにすることで、「一人旅がしたいけどなかなか動き出せない」といった同じ境遇にある参加者と打ち解けあうことで次のアクションに進むヒントやきっかけが得られるかもしれません。そして現地の方との交流を通じて地域に入ることで、より深く地域の暮らしや風土に触れることができ、旅そのものの醍醐味が味わえるはずです。2日目は完全フリーとして参加者が興味の赴くままに現地を巡れる時間としました。そのためには巡るための判断材料となる情報をしっかり整備して提供する必要があります。おすすめのカフェやショップ、絶景スポットなど散策が楽しくなるような情報を集約したマップのようなものが必要だと思いました。例えば毎回ツアーでメインとなる現地の方がオススメするスタイルで情報提供できたら面白いかもしれません。
コスト算出
もう一つ大切なことは、ツアー商品化を目指すからには事業としての継続性を備えている必要があります。十分な収益が見込めなければ、どんなに魅力的な内容であってもビジネスとしては成り立ちません。そこで、今回の現地視察から得た情報をベースにコストの算出も行いました。
最初に理想的な利益を設定し、その利益を確保するためには経費となって積み上がっているそれぞれの部分をどのように調整すればよいか。各内容を微調整しながら適切なコスト配分を探っていきました。十分なニーズが見込まれ、利益としても確保できるポイントを見つけることはビジネスとしてとても重要なポイントであることを学びました。
これからのこと
最後に今後についてですが、今年の秋頃にモニターツアーを実施したいと考えています。モニターツアーを通じて、私たちが意図している訴求ポイントに対して本当に魅力を感じてもらえているかどうか、アンケート等を通じて調査をすることで、プランとニーズとの間のギャップを埋めていきたいと考えています。また、引き続き継続的に取り組んで行けるプロジェクトにできるように後輩たちへの引き継ぎについても検討を進めています。
私たちの取り組みを発表します!
というわけで、引き続きより良いツアー商品になるよう取り組んでいきたいと思っています。今回のプロジェクトについては6月24日(金)に大手町の『OTEMACHI KORTO』で行われるワークショップイベント『Be Think – 共につくる旅 –』でプレゼンテーションをさせていただく機会を設けていただきましたので、ぜひお時間のある方はご参加いただけると幸いです。私たちのツアープランをより魅力的なものにする為に、ぜひヒントをください。よろしくお願いします!
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